ジョブ型雇用推進に関するコラムに対して

今日は、労働新聞社のコラムについて、考えをまとめたいと思います。

https://www.rodo.co.jp/column/93656/

コラムの中では「解雇規制」がテーマとなっていますが、それよりも、総合職としての職務無限定性と、ジョブ型雇用をどのように結びつけるのかが、問題ではないでしょうか。

ジョブ型雇用は、「職務内容、勤務場所、勤務時間を限定した働き方」ということですが、それは総合職正社員の職務無限定性(職務内容、勤務場所、勤務時間が無限定)と相反するわけです。

そして日本の雇用の特徴として、この無限定性とそれに伴う企業内人的資本投資がある以上、安易にジョブ型雇用を推進することは、さまざまな問題を生みかねません。

ジョブ型雇用の問題

代表的な問題は、若者の失業率の高さです。

日本の新卒の失業率は、他の諸外国と比べて劇的に低いと言われています。
(2012年OECD調査だと、日本7.9%、アメリカ16.2%、イギリス21%、イタリア35.3%、フランス23.8%、スペイン53.2%)その要因は、新卒一括採用が行われるからです。

要するに、ビジネス的スキルはほとんど持ち合わせていない学生を、同時期に一気に採用して、研修を行い、現場で教育を行い、異動をしながら職務適性を見極めたり、さまざまな職種を経験させつつ、一人前に育てていく、という仕組みがあるのです。

ジョブ型雇用が進むとどうなるか。新卒のビジネススキルがない学生と、ビジネススキルがある社会人が同じ土俵で争うことになります。もちろん一部の企業、一部の職種で、企業内育成をしっかりしたいと思う場合には、学生を採用することもあると思いますが、むしろ高いビジネススキルを必要としない職種においては、少しでも経験がある社会人の方が採用される可能性が高いと言えます。

結果的に若者の失業率増加につながり、ひいては社会不安を引き起こすことにもなるわけです。

現時点での現実的な選択肢

おそらく、ジョブ型雇用を「選択できる」という仕組みに落ち着くのだと思いますが、それでは結局のところ選択する人がほとんど現れない状態に落ち着くんじゃないかなと思います。

在宅勤務も、元々は多くの企業で、条件を満たす希望者が利用できる仕組みだったと思いますが、ほとんど利用されていませんでしたよね。男性の育児休業も同じく。

ちなみに、ジョブ型雇用の場合、休職者の復帰基準はより明確に、限定的になりますので、メンタルヘルス不調者の対応は、比較的容易になりますね。一方で「選択」を復職時にやり出すと、復帰基準が揺らいでしまいますので、選択を安易に行うべきではないと考えます。

次の時代の人事制度の考案は、自分のライフワークだと考えています。上記の妥協点は、現状の一つの問題である、さまざまな事情で限定的な働き方しかできない人への手当てとしては機能しますが、社会全体の問題解決にはつながらないアプローチです。もっと深めていきたいと思います。

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