日本企業の特殊性

某化学メーカーが、Twitterで大炎上している件、人事に関係する身として、また、実際に自分も同じようなことがあった身として、思うところがあったので、今回の件には直接言及しませんが、少し考えをまとめてみました。

日本における正社員とは

日本企業で一般的な正社員とは、まさに無限定であると、濱口先生は指摘しています。
つまり、職種や業務内容・勤務地・勤務時間、これらが全く限定されていないということです。

これには数々にメリット・デメリットがありますが、今回取り上げたいのは2点です。(人事の成り立ちという本で詳しく取り上げています)

1.賃金の上昇率

一般的な正社員は、最初は事務系/技術系くらいの違いはありますが、複数の部署を異動と言う形で経験して、徐々に昇格し、それに加えて賃金が上がっていきます。

ですが、これってそもそも少しおかしくないですか?
例えば、経理で5年経験した社員よりも、つい先月異動してきた入社10年(だけど経理は初心者)の社員の方が、給与が高いことが一般的なんですよ?
このマジックを成り立たせているのが、いわゆる「職能給」という、日本独自の給与体系です。

話を戻すと、職能給により、日本の一般的な大卒正社員は、役職に就かなくても、入社当初から2倍位までは賃金が上昇するといわれています。

一方で、欧米で一般的な職務給だと、同じような大卒正社員の賃金上昇率は2割程度です。転職をするなりして、上位の職種に就かなければ、大幅な賃金アップは望めません。
なぜなら、同じ仕事に対しては同じ賃金が支払われることが一般的であり、まさに「同一労働同一賃金」だからです。

2.玉突き人事

例えばあなたの会社で、営業部長が定年により退職することになった場合、その補填はどうするでしょうか?

一般的な日本の企業であれば、経理部長が一時的に兼任するとか、営業次長が部長に昇格するとか、そのような対応を取ると思います。では、その異動によるさらなる補填はどうすると思いますか?

結局、これを繰り返していくと、大規模な玉突き人事が発生します。そして、最終的には、新卒を人数分雇えば、何と営業部長を補填することが可能となります。

このどこが特殊なのか、疑問に思われるかもしれませんが、仮にこれが欧米企業だとどうなるか。
営業部長が退職することになった場合、(もちろん内部にも募集の提示が行われると思いますが)外部の人材市場に、必要な経験者を募集して、採用します。それだけです。

そもそも異動は、職種の変更となるため、労働契約を再提携しなければなりません。

まとめ

日本

  • 異動がある
  • 様々な職種を経験しないといけない
  • 賃金は上昇する
  • 人材の補填が容易

欧米

  • 異動がない
  • 望んで動かない限り、ずっと同じ職種
  • 同一労働同一賃金により賃金は上昇しない
  • 人材の補填が一苦労

こんな違いがあると思います。

今回、育休明けだけでなく、例えば結婚直後、出産直後、マイホーム購入直後、こういったタイミングで異動することに対して、大きな不満が噴出しています。

でも、多分そのようなタイミング関係なく異動は行われていて、その一部はタイミングが悪いから、大きな問題になっているだけではないでしょうか。

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